前回に引き続き「鑿の用語」についてお話し致します。
刃裏に関する用語で「三つ裏とか二つ裏」が有ります。
刃裏は通常全体に 裏スキが有り、凹面(くぼんでいます)になっています。
しかし、この裏を二つ又は三つに仕上げた鑿が有ります。この裏の事を、裏の数で呼んでいるのです。
のみ鍛冶職人の腕の見せ所でしょうが、大変な技術を伴います。よって高級な鑿にしか仕上げません。持つことでステイタスを感じている大工もいるかもしれません。
実は 見た目ではなく中央の裏線に効果も有るのです。
鑿は穴を掘ったり、木材の表面を平面に仕上げたりする道具です。
この作業の際 鑿が垂直に刺さるように、又は水平に削れるように裏面がガイドしてくれるのです。
この線が無い鑿は掘る時、裏面へと鑿の刃先がカーブして行く力が働きます。
少しでも垂直、平面に削れるようになっているのです。
では「ベタ裏」なら平面のまま掘れるから良いのではとお考えでしょう?
「ベタ裏」とは、裏スキが無く、くぼんでいない、まったいらの裏の事を呼びます。(写真右のノミ)
作業性は良いのでしょうが、ベタ裏の鑿は刃裏を平面に研ぎにくいのです。また裏を研磨して行きますとだんだん裏側に付いている鋼が減っていくのです、最後は地金が出て刃物にならなくなります。
刃裏が有った方が簡単に裏を出せ、鋼が減って無くなる事は有りません。
洋のみ(外国の鑿)には裏が有りません。全鋼製(日本の鑿は鋼付けです)と言う事もあるでしょうが、
日本の木造軸組建築のように丁寧な作業をする必要が無いからです。刃先の切れ味やホゾ穴などの隅加工をきちっとやれるのは日本の鑿が有ってこそ、と思います。
次回は鑿の「スリ合わせ」とは?についてお話しします。